治療は自分で選び取る時代

病気になってから対処するのではなく、先に手を講じる予防医学の範囲が広がってきています。仕事や生活に支障をきたすがんですが、リスクコントロールの要は、相手を知り、自分が講じられる手立てを知ることです。がんの予防や治療はめまぐるしく変化する選択肢からベネフィットとリスクを検討し、決断を繰り返すプロセスの連続になります。
夜勤をする女性の看護師であれば、乳がんのリスクが高まるとされています。そして、乳がんはそのリスクコントロールの好例で、しこりとその周囲を切り取り、乳房を残す方法と、すべてを切除する方法があるのです。女性にとって乳房を失うことは耐え難い苦痛で、かつては悩んだ末に温存手術を選び、再発のつらさを味わうケースや左右差を生じるケースもみられました。しかし、術式は進化し、現在では美容面に配慮した切除と再建手術というように選択肢も変わっているのです。全額自己負担で100万円以上はかかっていましたが、現在は保険適用の範囲になっています。形が美しく体の負担が少ないしずく形の人口乳房が保険適用された後は、より再発リスクの少ない手術を選択する女性が増えているのです。
また、卵巣がんの5から10パーセントは遺伝性のもので、父方や母方に乳がんを発症したものが2人以上いる場合や2親等内に卵巣がんを発症した人がいる場合は、遺伝子検査もリスク管理の選択肢の1つになります。卵巣がんは早期発見が難しいので、30代からは婦人科検診や血液検査を半年に1回は受け、早期発見と治療を意識すると良いでしょう。